耐震補強計画
診断結果を受け、どのような補強が可能なのかを探り、補強方法を比較し選択して最終案に到達するまでが耐震補強計画業務です。マンションの耐震補強は、建築関連法規上、区分所有の権利関係上、建物の使用上とさまざまな制約を受けます。一般的には、制約が多いほど、また、補強箇所数が多いほど、補強計画の「難易度」が高くなります。主な業務の内容を下記に示します。
主な業務内容
・業務フローの作成 ・現地調査 ・設計条件等の整理 ・法令チェック
・行政等との事前協議 ・補強計画の立案 ・補強案の構造計算 ・計画図の作成
・建築2次部材、設備の耐震化の検討 ・概算工事費の積算 ・資金計画の確認
・管理組合との打合せ
計画修繕(大規模修繕工事)と補強工事を同時に実施する場合はその調整も必要です。
IS値が極端に小さい建物の場合、規定値まで補強するのはかなり非現実的なものもあります。その場合は、複数年度にわたって段階的に補強する方法を考えたり、建替えとの比較検討を行うことも考えられます。
補強計画の検討・確認事項の例
検討・確認事項 | 例 | |
設 計 条 件 の 整 理 |
法令手続の有無 | 既存建物の法令適格・不適格の確認(是正の必要な箇所の確認)/建築確認申請の有無(増築・大規模な修繕・大規模な模様替え)/耐震改修促進法に基づく耐震改修計画認定の有無/消防法に基づく各種届出 |
補強箇所の現況 確認 |
敷地条件(狭さ)/権利関係(共用部分、専有部分の区分、区分所有者と居住者・占有者)/利用状況(住宅、店舗、駐車場、駐輪場等)/工事中の制約(移設・移転・仮住まいの要・不要)/ 補強後の使用変更 | |
補強箇所の 法令等の制限 |
建築面積・延べ面積等(増築)・容積率・建蔽率 /高さ制限・斜線制限・日影 /採光面積・換気面積等 /避難経路の変更 | |
所有者等の 権利関係の調整 |
各戸の公平性 /共用部分の変更の有無 /専有部分に影響する場合の区分所有者の承諾の必要性 /店舗等の営業補償の有無等 | |
付帯工事の有無 | 設備配管・機器類の移設 /仕上げ材の撤去・復旧(床・壁・天井) | 耐 震 検 討 |
構法・工法の検討 | 特殊な認定工法の採用の検討/工期/コスト/面積への影響(壁厚など) |
構造補強検討 | 補強案別の構造計算 /段階的補強の検討 | |
建築2次部材等の耐震化 | 玄関ドア、窓サッシ、ALC版、タイル、ガラスブロック、天井材等の固定 ブロック塀・万年塀の耐震化(撤去・更新) |
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設備の耐震化 | 配管類・受水槽・高置水槽・ポンプ・電気温水器等の固定、耐震化 | 費 用 検 討 |
地方公共団体の助成制度 | 助成要件の確認(建物の要件、指定評定機関の有無等) /設計費用の助成、補強工事費用の助成 /助成の手続き(提出書類等)とスケジュールの確認 |
工事費と資金計画 | 概算工事費の検討/資金計画(助成金の活用・融資利用・修繕積立金徴収額の変更) /長期修繕計画の見直し・変更 |
そ の 他 |
計画修繕の有無 | 大規模修繕と耐震補強工事の工事内容調整 |
建替えとの比較 | 法令チェックと建替えボリューム検討/コスト/工期 |