JASOの概要

マンション耐震化の進め方


耐震精密診断

耐震精密診断は、より高度に建物の耐震性能を把握しますので、現地調査を行うなど、精度を高めて診断を行ないます。診断期間は、建物の規模やかたち(診断の難易度)にもよりますが、おおむね3~9ヶ月程度かかります。
マンションの耐震精密診断は、事務所ビルや学校などで一般に「耐震診断」と呼ばれる業務の他に、合意形成や自治体への手続きに関する支援などが必要となり、以下に挙げる業務が全般的に行なわれます。

アドバイザー派遣

現地調査

コンクリートコア採取→公的試験場で強度と中性化深度測定  
不同沈下測定(地盤等の沈下により建物が不均一に歪んでないか調べる)  
劣化調査(構造躯体の劣化度合いの目視調査)  
マンションの場合は、コンクリートコア採取の場所や調査日程などを事前に調整し、掲示や配布チラシを準備します。

診断

(財)日本建築防災協会の診断基準に則り、耐震精密診断を行います。  
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造は一般に第2次診断法や第3次診断法という診断基準に基づいて行います。

評定書取得

診断内容が妥当であるか、第三者のチェックを受けます。  
通常第三者機関の評定は数回の委員会で診断方針や結果を説明し評定委員の指摘により診断の追加検討や修正を行ないます。  
自治体から診断費用の補助金を受ける場合は、評定書取得が補助金交付の条件になっていることが多くあります。

診断結果の説明

耐震精密診断の結果を、管理組合向けに分かりやすく説明します。  
必要に応じて居住者説明会での説明を支援します。

補助金交付のための支援

自治体から補助金交付を受けるための申請書類の作成や、必要な書類の準備を行なうなどの支援を行ないます。

耐震精密診断

耐震精密診断(2次診断)の内容

第2次診断法は柱と壁の強度、粘り強さ、建物形状及び経年劣化度から建物の耐震性を検証する方法で、一般的な建物の構造特性に適した、最も適用性のある診断方法です。
診断者は、建物の弱点を考えながら建物の性能を把握し耐震診断を行っています。

診断次数 第2次診断法
適した構造特性
主に柱・壁の破壊で耐震性が決まる建物

必要事項 床面積、階数、階高、柱・壁断面寸法、柱内法長さ、腰壁・垂れ壁寸法、壁開口部寸法、柱・壁配筋、コンクリート強度、鉄筋強度
難易度 難しい

(出典:マンションの耐震化マニュアル 国土交通省2007)

[耐震精密診断(2次診断)で行う主な作業内容]

準備作業 既存図の整理または作図/コンクリートコア位置の検討
現地調査 構造躯体の強度・劣化調査(コンクリートの圧縮強度試験・中性化深度測定、鉄筋のかぶり厚さ等の調査)
目視によるひび割れ・変形・老朽化・不同沈下調査
図面と現況の照合(住戸内の調査は基本的に行えないため共用部を対象)



荷重計算 仕上げや構造躯体の厚さにより床や壁の面積当たりの重量を計算
建物の層の重量及び総重量の計算
応力計算 柱にかかる常時及び地震時の鉛直力(垂直方向にかかる力)の計算
部材耐力計算 柱・壁のせん断耐力計算(現地調査のコンクリート強度を考慮して計算)
壁抜け柱の検討/開口を考慮した壁の耐力の検討
耐震性能計算 部材(柱・壁)の粘り強さによりグループ分けし建物の耐震性能を計算
建物の変形能力を検討し、その時に崩壊しないか検討する。
形状指標・経年指標の算出
第二種構造要素の判別(壊れた場合崩壊する柱)
桁行き方向、梁間方向の左及び右加力時の構造耐震指標値を算出し建物の耐震性能を判定
報告書
の作成
診断者以外の第三者が見てもわかるように耐震診断報告書をまとめる。
評定書の取得 第三者(評定機関の委員)に診断内容が妥当であるか評価を受ける。

最近では、耐震診断は公に認定された耐震診断プログラムにより基本的な計算を行いますが、プログラムのみでは検討することが出来ない項目(壁抜け柱や開口を考慮した壁の耐力検討など)については別途手計算を行い、耐震指標値を算出するのが一般的です。

[耐震診断プログラムの入力例]

クリックすると大きな画像で見ることができます。

[耐震診断プログラムの出力例]

クリックすると大きな画像で見ることができます。

耐震診断プログラムを使った場合、モデル化の良否に影響を受けます。
診断者は、建物を慎重にモデル化し、耐震診断プログラムの適用範囲内で計算できるように入力していきますが、複数開口がある壁をモデル化する場合には、開口を包絡開口とするか、面積等価開口とするかなど、個別の判断を要する場合もあります。
耐震診断プログラムでは、部材の粘り強さから考えられるすべての階で終局限界時の構造体新指標を計算し、最終的に各層がどの程度変形できるかを判断します。
計算が一通り終わると「耐震診断報告書」としてまとめ、評定委員会にて診断内容の妥当性を判断してもらいます。
評定委員会では、診断方針やモデル化の考え方などを説明した上で、修正や指摘事項を受け持ち帰り再検討し、概ね3回程度の評定委員会を行うこととなります。
したがって、業務量は増えますが、計算結果の信頼性がかなり高まりますので、トラブルを未然に防ぐ事ができます。公的な助成金を受けるには、この評定委員会を受けた証しである「評定書」を取得することが必須条件となる場合もあります。

アドバイザー派遣

マンション構造体の耐震性の判定

Is≧Iso かつ CTU・SD≧0.30・Z・G・U (RC造の場合)  
Is≧Iso かつ CTU・SD≧(0.25または0.28)・Z・G・U (SRC層の場合)

構造耐震指標(Is)(Seismic Index of Structure)

構造耐震指標(Is)は下記の式により求めています。
Is=Eo・SD・T
Eo:保有性能基本指標
SD:形状指標
T:経年指標

構造耐震判定指標(Iso)

構造耐震判定指標(Iso)は下記の式により求めています。
Iso=Es・Z・G・U
Es:基本耐震判定指標
 (簡易診断の場合0.80、第2次診断・第3次診断の場合0.60)
  建物に要求される基本的な耐震性能を表す指標
Z:地域係数(関東地方の場合1.0)
  地震活動や地震動強さを考慮するための補正係数
G:地盤指標(平坦地の場合1.0 崖地の場合1.1~1.25)
  地盤、地形、地盤と建物の相互作用を考慮するための補正係数

耐震精密診断

耐震精密診断(3次診断)の内容

第3次診断法は、第2次診断法で行った柱と壁の耐力計算のほか、大梁や基礎の耐力をも考慮に加え、強度と粘り強さ、建物形状および経年劣化度から耐震性を検証する方法です。計算量も多くなりモデル化の良否の影響を大きく受けるため、診断者の経験と判断力が重要です。
高層の建物や、梁の影響が大きい建物の場合には、第三次診断を行うものとして考えます。

診断次数 第3次診断法
適した構造特性
主に梁の破壊や壁の回転で耐震性が決まる建築物

必要
事項
床面積、階数、階高、柱・壁・梁断面寸法、柱内法長さ、腰壁・垂れ壁寸法、壁開口部寸法、柱・壁・梁配筋、コンクリート強度、鉄筋強度、梁スパン、柱・梁強度比
難易度 非常に難しい

(出典:マンションの耐震化マニュアル 国土交通省2007)

[耐震精密診断(3次診断)で行う主な作業内容]

準備作業 既存図の整理または作図/コンクリートコア位置の検討
現地調査 構造躯体の強度・劣化調査(コンクリートの圧縮強度試験・中性化深度測定、鉄筋のかぶり厚さ等の調査)
目視によるひび割れ・変形・老朽化・不同沈下調査
図面と現況の照合(住戸内の調査は基本的に行えないため共用部を対象)



荷重計算 仕上げや構造躯体の厚さにより床や壁の面積当たりの重量を計算
建物の層の重量及び総重量の計算
応力計算 柱にかかる常時及び地震時の鉛直力(垂直方向にかかる力)の計算
部材耐力計算 基礎の引抜耐力、圧縮耐力の算出
耐力壁の引抜耐力、圧縮耐力の算出
大梁
・柱・壁のせん断耐力計算(現地調査のコンクリート強度を考慮して計算)
壁抜け柱の検討/開口を考慮した壁の耐力の検討
柱と梁の耐力を比べて、柱と梁のどちらが壊れるか検討
耐震性能計算 部材(柱・壁)の粘り強さによりグループ分けし建物の耐震性能を計算
建物の変形能力を検討し、その時に崩壊しないか検討する。
形状指標・経年指標の算出
第二種構造要素の判別(壊れた場合崩壊する柱)
桁行き方向、梁間方向の左及び右加力時の構造耐震指標値を算出し建物の耐震性能を判定
報告書の作成 診断者以外の第三者が見てもわかるように耐震診断報告書をまとめる。
評定書の取得 第三者(評定機関の委員)に診断内容が妥当であるか評価を受ける。

第3次診断法は、梁の耐力や杭の引張・圧縮耐力等も考慮します。
図面に杭耐力の記載がない場合は、ある程度の仮定により行うことができますが、地盤の状況を示す「柱状図等」も無い場合には、杭の耐力を仮定することができないので、別途ボーリング調査などが必要となる場合もあります。
第3次診断法は、モデル化の良否によって診断結果に幅がでますので、第2次診断の結果を含めた総合的な診断を行うことになります。